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最高裁判所第二小法廷 昭和29年(あ)3546号 決定 1957年4月06日

本籍

朝鮮京城府黄金町七番地

住居

横浜市中区山下町一二六番地

貿易商

金基信

大正六年六月二一日生

右の者に対する麻薬取締法違反、昭和二四年政令第三八九号違反、道路交通取締法違反、外国為替及び外国貿易管理法違反被告事件について昭和二九年九月二八日東京高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人小泉英一の上告趣意第一点は刑訴法違反(起訴状記載の偽造米国軍票三百弗を収受したという事実と一審判決認定の真正なる米国軍票三百弗を収受したという事実とは、その収受の客体たる軍票が真正か偽造かの差異だけであつて軍票三百弗を収受したという具体的事実関係は同一であり、しかも右両者は同一の罰条すなわち昭和二五年一〇月二日政令第三〇一号による改正後の昭和二四年政令第三八九号四条一条に触れるものであるから、公訴事実の同一性を害しないのみでなく訴因変更の手続を要するものではない。)、同第二、第三点は事実誤認と法令違反、同第四点は量刑不当の主張であり、弁護人村尾元良の上告趣意は違憲をいう点もあるが実質は量刑不当の主張であり(その他の点については前記小泉弁護人の上告趣意に対する説明を参照)、弁護人徳岡一男同高田完の上告趣意第一点は刑訴法違反、同第二点は事実誤認と法令違反、同第三点は刑訴法違反(一審判決は、被告人の供述中判示認定に添はない部分を除いたその余を証拠に供したものと認むべきである。)と法令違反、同第四点は量刑不当の主張であつて、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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